クロネコのクロと一緒に1119

 ボクは気にせず通りへ出た。数十メートル進んだところで、後ろから「ニャン」という声が聞こえて振り返った。

 クロネコのクロがこちらへ近づいてくる。追っかけてきたのだ。ボクはしゃがんだ。クロネコのクロが追い付いてくるのを待った。そして右手を差し出した。

   クロネコのクロはまた「ニャン」と短く鳴いて、差し出したボクの右手になすりついてきた。

 ボクは少しの間、撫でていたけれど、買い物へ行かなければいけないから、クロネコのクロに「ニャン」とひとこと言って立ち上がった。そして、再び歩き始める。しかしそこからクロネコのクロは買い物へ行くボクの後ろをずっと歩いてきたんだ。

   正確に言うと小走り。タッタッタッタッタッ……とはずむような小走り。

 八百屋、雑貨屋で買い物して家へ帰るまでずっと。買い物している間は、店の外で待っていた。そしてボクが店を出るとまた後ろを着いてくる。

   別にしつけをした覚えはない。むしろ、ずっと観察されているかのような感じだった。

 ボクは、その日はガラス細工屋のじいさんの所へ行くのは、どうしようか迷ったけれど、いたずらされても困るからと思い、やめた。

   本当は月の色について、もう少し話を聞きたかったんだけれどね。
  

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クロネコのクロとボク

フィクションです。