お月さんは何色?1107

 次にボクはアサガオの前にいた。ラッパのような形をした花。でもラッパにしては色は艶やか。アサガオはボクにこう話してくれた。

「私もヒマワリさんと一緒ね。お月様なんて興味ないわ。私はね、朝、太陽様が近づいてきて空が明るくなり始めると花を咲かし始めるの。太陽様にこの花を見てもらいたくて。毎日朝は早起きだから、昼には眠くなっちゃうの。

   そりゃお月様は何回か見たことがあるけれど、正直印象に残っていないの。そういえばどんな色だったかしら。よく見ていないの。あなただってそうでしょ。

   何回かあったことのある人がいて、どんな人だったか思い出そうとしても思い出せないことがあるはずよ。

   例えば髪型とか、禿げかかった頭、坊主頭、綺麗なスキンヘッド。そういえばメガネは掛けていたかしらって。

   意外にごっちゃになってしまうはずよ。それにお月様はやってくる時間がバラバラなのよ。一週間もすると全く違うタイミングで現れるでしょ、それどころか形さえ全く違う。何か落ち着かないというか男らしくないわ、好きになれないの。

   太陽さんは時間も現れる方向も位置も昨日と今日ではそんなに変わらない。夏と冬では違うかもしれないけれど私の見ている間ではそんなに変わることはないはずよ。

   花の命は結構長いという人がいるけれど、私からするとやっぱり短くて儚いわ、そんなにお月様ばかり見ていられないの。そんな男らしくて筋の通った太陽様がかっこいいと思うの。私は明日も太陽様がさわやかにやってくるのをここで待つの。」

 アサガオは話が長かった。

クロネコのクロとボク

フィクションです。

0コメント

  • 1000 / 1000

クロネコのクロとボク

フィクションです。